NHKの連続テレビ小説『風、薫る』。第14週・第69話(木曜日)は、プロの文筆家として歩み始めたシマケン(佐野晶哉)とりん(見上愛)の温かい交流から幕を開けました。
しかし、後半には患者の冷酷な現実、そしてまもなく訪れるであろう激動の「時代(戦争)」の足音が静かに、しかし確実に忍び寄る非常に重厚な回となりました。本話を詳しく解説します。
主要キャスト&登場人物の動きと物語への影響
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奥田りん(キャスト:見上愛)
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平の看護婦に戻り、シマケンに「大事な時に間違いばかり」と本音を吐露。再発した山本さんの担当として、再び過酷な命の現実と向き合います。
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大家直美(キャスト:上坂樹里)
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新たな取締りとして冷静に現場を指揮。再入院した山本さんの担当に迷わずりんを指名。吾郎からはその芯の強さを「ただ者じゃない」と一目置かれています。
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島田健次郎 / シマケン(キャスト:佐野晶哉)
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団子屋でりんと笑顔で会話。「書評が評判になってしまって」と謙遜しつつも、りんの看護への情熱を優しく肯定する、一番の理解者としての姿が光ります。
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小川吾郎(キャスト:甲斐翔真)
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2等軍曹。退院する陣内清に寄り添い、直美への真っ直ぐな尊敬と好意をりんに託して、前線(あるいは新たな任務)へと向かいます。
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第69話のあらすじ:シマケンとの団子屋での笑顔、そして山本さんを襲う非情な再発
夕暮れの団子屋の前。本の山を抱えたシマケン(佐野晶哉)と出会ったりん(見上愛)は、久しぶりに穏やかな笑顔で言葉を交わしていました。 「私は大事な時に間違いばかりで……」と、取締を解任された悔しさと自分の未熟さを吐露するりん。しかしシマケンは、「これからは(管理業務ではなく)看護婦の仕事に専念できる。それは喜ばなければいけない。一ノ瀬さんは、看護婦の仕事が本当に好きなんでしょう」と、その本質を優しく包み込むように肯定します。 りんは「島田さんもお忙しいと聞きましたよ」と声をかけると、シマケンは照れくさそうに「書評が評判になってしまって!」と一言。りんはその活躍を眩しそうに見つめるのでした。
病院に戻ると、重症室にいた患者の陣内清がいなくなっていました。無事に退院が決まったのです。付き添っていた軍曹の小川吾郎(甲斐翔真)は、直美がかつて差し入れた「小さなおおぎ」を陣内が無理強いで最後に食べたことを明かし、「あいつ(直美)は怖いけど優しい。孤児なのにきりっとしていて、ただ者じゃない」と、その凛とした強さに深く惹かれている様子。吾郎は「僕は彼女を尊敬している。だからまた会いに来ます」とりんにまっすぐ伝えます。さらに「……お邪魔ですかね?」と尋ねる吾郎に、りんはクスッと笑って「それを私に聞きます?」と返すのでした。
そんな温かいエピソードの直後、一度は大腸の手術が成功して無事退院したはずの患者・山本さんが、激しい苦痛とともに再入院してくるという緊急事態が発生します。がんの「再発」でした。
新・取締役となった直美は、迷わず「一ノ瀬さん、担当をお願い」とりんを指名します。 山本さんは苦痛に耐えながら、「手術をあと2週間延ばせないか……」と懇願します。山本さん夫婦には、「地元の花火の日に、二人で牛鍋を食べる」という大切な習慣がありました。「去年約束したんだ。来年も一緒に食べようとね」と涙ぐむ妻。しかし、一刻の猶予も許されない容態のため、山本さんはそのまま担架(タンカー)で手術室へと運ばれていきます。妻は夫の無事を願い、廊下で涙を流しながら一心に祈り続けます。
長い手術が終わり、出てきた医師は「できる限りのことはした。あとは本人の体力次第だ」と苦渋の表情で語ります。 やがて、病室で意識を取り戻した山本さん。しかし、その口から漏れたのは残酷な一言でした。 「……がんが、広がったんだろう」 その核心を突いた言葉に、りんは胸を締め付けられながらも、優しく声をかけます。 「まだ意識が混濁されているようですね……」 患者に真実を告げられない時代の葛藤を抱え、りんはたまらず病室を後にするのでした――。
第69話の見どころ&興味深いポイント
① シマケンの「なってしまって!」と、最高の理解者としての言葉
りんにとって、今の自分の「看護婦が楽しい、好き」という気持ちを、何の打算もなく真っ直ぐに認めてくれるシマケンの言葉がどれほど救いになったことか。自分の出世を「評判になってしまって」と少し困ったように笑うシマケンの謙虚さも含め、二人の精神的な距離がグッと縮まった屈指の名シーンです。
② 吾郎が直美に抱く「ただ者じゃない」という深いリスペクト
直美の生い立ち(孤児)や不器用な優しさを、五郎は完璧に理解し、一人の人間として「尊敬している」と口にしました。お邪魔ですか?とりんに照れながら聞く甲斐翔真さんの爽やかな演技が光ると同時に、彼が「また会いに来る」と言い残して去る姿は、まもなく始まる戦争へ向かう軍人の、切ない約束のようにも映ります。
③ 「花火の日の牛鍋」と、告げられないがん告知
明治中期、現代のように「がんです」と本人に明確に病名を告知する風潮はほとんどありませんでした。だからこそ、意識が戻った瞬間に自分の体の限界を悟り「がんが広がったんだろう」と呟く山本さんの言葉の重みと、それを「意識の混濁」として受け流さざるを得ない平ナース・りんの涙が、当時の医療の限界と切なさをリアルに描いています。
第69話のまとめ:命の約束と、すれ違うプロたちの祈り
第69話は、シマケンの出世や吾郎の恋心といった「人生の新しい彩り」が描かれた一方で、医療の現場では「花火の日の牛鍋」というささやかな夫婦の約束さえも奪おうとする、病魔の残酷さが鋭く突きつけられた回でした。
「あとは体力次第」と言われた山本さんは、もう一度妻と牛鍋を食べる奇跡を起こせるのか? そして、担当としてその命の灯火に寄り添う平ナース・りんは、指導者だった頃とは違う「一人の看護婦」として、どう立ち振る舞うのか。
第14週のクライマックスに向けて、重厚さを増していく『風、薫る』から目が離せません!
