NHKの連続テレビ小説『風、薫る』。第13週・第64話では、正看護婦となった一期生たちが、教育者・管理者として「組織の洗礼」と「看護の本質」という二つの巨大な壁にぶつかり、深く苦悩する姿が描かれました。
元同期・喜代(菊池亜希子)の言葉に隠された過去、直美(上坂樹里)の現実的な戦術への反発、そして現場の生徒たちから突きつけられる鋭い問い。重厚なドラマが展開された本話を詳しく解説します。
主要キャスト&登場人物の動きと物語への影響
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奥田りん(キャスト:見上愛)
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生徒たちから「手紙の投函は看護か、ただの善意か」と問われ、教える立場として「看護とは何か」の定義に再び直面し、ため息をつきます。
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大家直美(キャスト:上坂樹里)
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団子30本で現場を丸く収めようとする「甘いうやむや戦術」を仕掛けるも、看病婦から「甘い」と一蹴され、自らの居場所について揺らぎ始めます。
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須永ツヤ(キャスト:東野絢香)
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収入を減らさないために無理をして勉強と仕事を両立させようと気張りますが、ついに病室でめまいを起こしてしまいます。
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喜代(キャスト:菊池亜希子)
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伝道師の見舞いで来院。かつてりんが和泉公爵夫人を救った際、バーンズ先生が敢えて褒めなかったことが、自身の進路に影響を与えていたことを明かします。
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島田健次郎 / シマケン(キャスト:佐野晶哉)
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団子屋で直美と遭遇。自分の病弱だった過去を語る一方で、直美から「りんは相当鈍いから(恋愛は)苦戦する」と核心を突かれます。
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第64話のあらすじ:団子戦術への洗礼、そして「手紙の代筆は看護ですか?」
中庭でトメ(原嶋凛)の前に現れた喜代(菊池亜希子)。そこへりんと多江(生田絵梨花)も駆けつけます。喜代が病院を訪れたのは、自身が所属する伝道師の仲間が入院したため、そのお見舞いが目的でした。
その後、一人残って必死に机に向かい、猛勉強をしているツヤ(東野絢香)のもとへ、りんと喜代が笑顔で訪れます。ツヤは「私は、喜代さんみたいな立派な看護婦になりたいんです」と熱い決意を二人に吐露。りんは「看病婦の皆さんも応援してくれています。一緒に頑張りましょう」と励まし、ツヤの身体を気遣って「少しお休み(シフト)を増やしますか?」と提案します。しかし、ツヤは「お休みを増やすと給金が減ってしまうので、このまま続けさせてください」と、生活のために必死にそれを断るのでした。
その姿を見た喜代は、帰り際にりんにそっと打ち明けます。かつて見習い時代、りんが和泉公爵夫人を救う大金星を挙げた際、バーンズ先生(エマ・ハワード)が敢えてりんを厳しく律し、褒めちぎることをしなかったこと。喜代は「あの徹底したプロとしての厳しさを目の当たりにして、自分には割り切れない面があると感じた。それが、私が病院の看護婦にならなかった理由の一つなの」と語り、「だからこそ、無理をしているツヤのことは気をつけてあげてね」と言い残して去っていきます。
一方、現実主義の直美は、生徒と看病婦の間のギスギスした空気をマイルドにしようと、“甘いものでうやむや戦術”を画策。お馴染みの団子屋で一気に30本もの団子を注文します。そこで偶然シマケンと出くわした直美は、りんに小説を読ませたがっている彼に「りんは相当鈍いから、これから苦戦するわよ」とバッサリ。シマケンは苦笑いしつつ、自分が子供の頃に病弱だった思い出を静かに語るのでした。
しかし、直美が意気揚々と持ち帰った団子に対し、ベテラン看病婦たちの反応は冷ややかなものでした。 「団子なんかで生徒の仲を取り持とうなんて甘いよ。これから毎年、新しい生徒が入ってくるんだ。看病婦の私達は、そろそろ違う仕事を探した方が良いのかな?」と一言漏らす、本音?嫌味?りんは講義で、「看護とは人の命を預かる仕事。しかし人は間違いを犯す。だからこそ共に働く仲間と協力し合うこともまた仕事なのだ」という事を生徒に話します。
そんな中、病室でシーツ交換をしていたエリート生徒が、入院患者から「この手紙を代わりに投函してほしい」と頼まれます。しかし、生徒はそれを看護婦の仕事?と納得いかない様子。「それは看護の仕事ではありません。ただの善意でやるべきことですか? 看護とは一体何なのですか?」とりんに鋭い疑問を突きつけます。教える側のりんは、その「看護の境界線」の難しさに、ただ深くため息をつき、「看護とは何かを問われているのは、指導者である私自身なのかもしれない」と自問自答するのでした。
その夜、長屋の丸山忠蔵(若林時英)が血相を変えて夜分遅くに病院へ飛び込んできます。長屋の住人である「とよさん」が倒れたというのです。「看護婦さんは診察できないの!? お医者さんにかかるしかないの!?」とパニックになる忠。直美は「私が治療代を出すから、すぐにお医者さんにかかって!」と伝えますが、病人とよは「直美ちゃんにお世話になるのはごめんだ!」と頑なに拒絶します。
緊迫した空気が走るその瞬間、夜間病棟で無理をして働いていたツヤが、突然激しいめまいを起こし、その場に崩れ落ちそうになってしまうのでした――。
第64話の見どころ&興味深いポイント
① 喜代が語る「ナースを選ばなかった本当の理由」
卒業式で「割り切れない面がある」と言っていた喜代の真意が明かされました。和泉公爵夫人の命を救ったヒロインに対し、感情を排して冷徹なまでにプロの基準を崩さなかったバーンズ先生の姿。それに畏怖を覚え、自分は病院ではなく「伝道師(宗教の愛)」として看護に関わると決めた喜代の選択には、非常に深いキャラクターの肉付けがなされていました。
② 直美の戦術の敗北と「組織のリアル」
これまで持ち前のスマートさで世渡りをしてきた直美が、ベテラン看病婦から「団子でうやむやにするなんて甘い」これから毎年生徒が入学するとなれば、看病婦の仕事が失業するのか?不安視している様です。物を配って解決する表面的な優しさではなく、命の現場における真のチームワークとは何かを、直美がこれから学び直す重要な契機となります。
③ 「手紙を代わりに投函するのは看護か?」という名不朽の問い
ナイチンゲールの思想でも度々議論される「看護と雑用・善意の境界線」に、現代の生徒たちが直面しました。効率や医学的処置だけを重んじるエリート生徒に対し、「相手は人間だから」と言ったツヤの言葉が重なるなか、熱血教師であるりん自身が「答えを出せない」とため息をつく演出は、大山捨松の「答えられないのが看護」というセリフに美しく着地しています。
第64話のまとめ:問われる指導者の真価、そしてツヤに迫る過労の罠
第64話は、正看護婦という華やかな肩書きの裏にある、指導者としての「言葉の重み」と「現場をまとめる難しさ」がこれでもかとリアルに描かれた、極めて引き締まった回でした。
生活のために「休みは取らない」と無理をしたツヤが、ラストで見せた危険なめまいのサイン。そして、とよさんの緊急事態に拒絶反応を示す長屋の医療格差。
いくつもの問題が一気に噴出するなか、りんと直美はこの危機をどう乗り越えるのか? 第13週のクライマックスに向けて、1秒たりとも目が離せません!
